「英雄色を好まず」!? 純潔を守った童貞皇帝たち
神聖ローマ帝国皇帝・ハインリヒ2世(973~1024)。
政務をおろそかにしていた先帝によって混乱気味だった領地をまとめあげ、さらに外敵からも土地を守り、さらにさらに熱心なキリスト教信者でバンベルク大聖堂を建設し……。
などなど、非常に有能な皇帝でした。
そのような有能な皇帝であれば、さぞかし女性にモテただろう、と考えるのが当然です。
実際、ハインリヒ2世にはクニグンデ、という皇后がいました。
童貞偉人には珍しい既婚者です。
「結婚しているなら童貞じゃないじゃないか!」と思われるでしょうか。
そう思った方は、まだまだ「偉人」というものが理解できていません。
「熱心なキリスト教信者」、ここがポイントです。
ハインリヒ2世は熱心なキリスト教信者であるがため、皇后クニグンデと互いに「純潔の誓い」を立てていたのです。
「お互いSEXしないでいようね」という誓いです。
セックスレスが離婚の原因となる現代では考えられません。
その熱心な信仰と純潔を守った、という事実から、ハインリヒ2世と皇后クニグンデはカトリック教会から「聖人」として認定されています。
ただ、そのために当然ながら子供はおらず、100年近く続いたザクセン王朝が断絶する、という結果になっています。
別に王朝が断絶しても他の王朝ができるだけであり、民衆にとっては大したことではないとも言えますが……なかなかそこまでできるものでもありません。
一言で言って「変人」ではあるでしょう。
童貞を守った皇帝としては、カール12世(1682~1718)もいます。
15歳でスウェーデン王として即位したカール12世は、その治世のほとんどを戦場で過ごし「軍事的天才」と呼ばれた「英雄」として知られています。
カール12世が童貞を守った理由、それは「自分が国民に対し、生きた模範となる」ためでした。
酒は飲みません、贅沢はしません、賭け事などの遊びもしません。
そんなカール12世にとって「女性とのSEX」など、とんでもない悪事だったのです。
いくらなんでも極端すぎる、とも言えましょう。
こういう上司を持った部下は、大抵の場合、苦労するものです。
「生類憐みの令」を制定した徳川綱吉の評判がイマイチなのと同じでしょう。
そんなことは気にしなかったであろうカール12世。
本人は「生涯童貞を貫いた男」として世界から仰ぎ見られ、讃えられることを望んでいたようです。
まさに童貞の中の童貞、「童帝」の名がカール12世にはふさわしい、と言えましょう。
世界だけじゃありません……! 日本の童貞偉人たち
今まで世界の童貞偉人たちを紹介してきましたが、当然日本にも童貞偉人は存在します。
その代表格とも言えるのが、童話作家の宮沢賢治(1896~1933)です。
『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』などの童話や『アメニモマケズ』の詩で知られる宮沢賢治。
彼も、生涯独身を貫いた童貞偉人です。
彼は人並みの性欲を持った男性でした。
しかし、彼は「良い仕事をするためには性欲に捕らわれるべきではない」という考えの持ち主でした。
友人に「性欲の乱費は自殺だ。良い仕事はできないよ」と語ったというエピソードが残っています。
オナニーすることすら自分に許さず、性欲が高まった時は一晩中歩いて発散させたそうです。
長期間射精しないことによって幻覚を見て、それを作品として昇華させた、という話まであります。
そんな賢治も、女性に縁がまったくなかったわけではありません。
高瀬露という女性に言い寄られた時は、彼女に嫌われるために居留守を使ったり、顔にわざと墨を塗りたくって対応したそうです。
何もそこまでしなくても……。
凄い話だ、とは思いますが、私のような凡人にはちょっと理解はできない話でした。
宮沢賢治のような「仕事に邁進した日本人童貞」には、江戸時代の思想家、吉田松陰(1830~1859)もいます。
吉田松陰の場合は若くして処刑された、という事情もあるのですが、やはり女性に興味が薄く「仙人」と呼ばれた、と言われています。
松陰の「仙人」はあだ名ですが、実際に仙人(のようなもの)を目指した日本人童貞がいます。
それが室町時代の大名、細川政元(1466~1507)。
細川政元は修験道にハマっていました。
そして「天狗になって空を飛ぶ術」を身につけるため、女人禁制を貫いたのです。
もう何をどうツッコめば良いのでしょうか……。
そもそもなぜ、天狗になるために女人禁制をしなければならないのでしょうか。
天狗って、むしろ性欲が強そうなイメージがあるのですが……特に鼻とか。
日本では「30歳まで童貞を貫けば魔法使いになれる」と言われていますので、それと同じような感覚だったのかもしれません。
ちなみに政元、結局天狗にはなれなかったようで、最後は暗殺されてしまいました。
童貞だっていいじゃない。
世界には想像以上に「童貞偉人」が存在していました。
彼らは歴史に残る功績を挙げたために「偉人」と呼ばれるようになったのです。
そこに「童貞」か「非童貞」か、はまったく関係ありません。
大事なのは何をやったか、であって、女とヤッたか、ではないのです!
全国の童貞の皆さんも童貞を恥じることなく、胸を張って生きていきましょう!
……でも正直、ちょっと変わった人間が多かったな、というのが記事を書いての感想ではあります。