AV男優にも時代の波!?『表参道文學』というAV男優・大島丈がやっている「AVじゃない仕事」

AV男優にも時代の波!?『表参道文學』というAV男優・大島丈がやっている「AVじゃない仕事」

「私、AV女優ですよ!こんなことやるために始めたわけじゃないのに(笑)」と言いつつも、AV女優ちゃんたちは、どこかしらでAV女優じゃないお仕事をしています。10年前くらいならば、一部のAV女優以外は、サイン会くらいですんでいたのですが、今や人気が出る=バラエティ的お仕事をしなければならないという感じ。

 

オフ会、トークイベント、歌のイベントなど、主催者が別業界の場合もあれば、事務所が仕切っていたり、AVメーカーが仕切っていたり。SODさんは女子社員酒場からスタートして、すっかりイベントを行うメーカーとして認識されてSyain Bar SOD女子社員も活況を呈していますね。

AV女優がやっていることをAV男優がしないわけにはいかないでしょう!?

AVとはSEXを、人が楽しめる、興奮するように描写するお仕事です。AV女優だけじゃなくてAV男優がいないと成立できません。年齢問題とかいろいろ言われてはおりますが(おっさんの学生服姿はさすがに減りました)、AV男優さんが勃起させてこそ、観る側も興奮できるわけだし、AV女優もスムーズに作品世界に没入できるわけです。

 

しかもAV視聴する人が、男子のみならず女子も観ている人が増えつつある。よってAV男優にも人気者が出てきて不思議じゃないわけで、実際のところ人気男優が数多くいるのは、みなさんご存知なお話です。

 

一般ドラマに本人役で登場した加藤鷹さんは、当時、突出した人気者でしたけど、現在は名前が知れ渡っている人の分だけ、人気者がいます。著書を出している人もいるし、ライブをやる人もいますね。女子向けAVを誕生させた女子人気が絶大な人もいます。

 

そんななか、オフ会などが発表されるとあっという間にソールドアウトしちゃう、人気AV男優とは、大島丈さんのことです。彼のファンに名前は名前があるのですが、AV女優さんやセクシーアイドルユニットが、アイドルの真似をして愛称を付けますが、男優でそれがあるのは、丈さんぐらいじゃないでしょうか。総称は「お丈さま」です。

 

とにかくサービス精神旺盛な大島丈さん。2ショットのハグにしろ、サイン中のトークにしろ「これをちゃんとできる人で、モテないわけはない」という神対応の持ち主。AV男優さんは、全体的にファンに神対応なのですが、丈さんは飛び抜けて「神」なのです。名前もちゃんと呼んでくれるし。

 

そしてあのイケメンでイケボイスとなれば、男子だって嫉妬どころか惚れてしまう人もいるんじゃないでしょうか……「おっさんずラブ」という意味じゃなくてですよ(笑)実際に、そういうファンもいらっしゃるようですね。

AV女優にも絶大な人気を誇るわけです。

 

「初めての撮影のときに、ずっと優しくしてくれて、終わってからも笑顔が素敵でした」(AV女優のAさん)

 

演技派でもあるので、こういう意見もあります。

 

「レイプシーンで本当にリアルで怖いんですけど、どこか引き込まれそうな……。途中からレイプを忘れそうになるんです(笑)そのぐらい優しいし、カメラが回ってないところでのケアも抜群です」(AV女優のBさん)

 

そんな女子モテ男の塊のような大島丈さん。実は、他のAV男優はやっていないイベントをやっているのをご存知でしょうか。

 

イベントタイトルは『表参道文學』です。

AV男優・大島丈が朗読イベントを行なっている!?

まずは『表参道文學』についてご説明しましょう。公式Twitterはこちら

 

これは大島丈さんが日本文学や官能小説、エッセイなどを朗読するイベントです。最近では丈さん書き下ろしの小説もあります。

 

当初は、バイノーラル録音に使用される「ダミーヘッドマイク」を使用し、ブースのある会場で、観客はヘッドフォンを装着して行う朗読劇でした。ダミーヘッドマイクは通常のステレオと違い、頭に直接響いてくるような音で聴こえます。耳元でささやかれているようにも聴こえるし、足下が動いていれば下から音が響いてくる。

 

丈さんは、頭の形をしたマイクに対して、抱きしめるような仕草もすることで、頭を触られている錯覚も使ってましたね。女性ファンから心の悲鳴が聴こえてくるシーンでした。

そして、この会場が表参道にあったので『表参道文學』というタイトルが付けられたわけです。

 

好評だった演目として、丈さんの優しい個性にピタリとはまった『よだかの星』『雨ニモマケズ』。そして、コミカルな調子が抜群だった『注文の多い料理店』という宮沢賢治作品とはシンクロ率が抜群!変態性がにじみ出るようなエロスを、じっくりと聴かせてくれた『人間椅子』(江戸川乱歩)。不可思議な世界観は、「日本初のホラー小説」とも言われる『夢十夜』(夏目漱石)。戦前の東京の下町路地での男女の不思議なエロスを嗅がせてくれた『濹東綺譚』(永井荷風)など、さまざまな文学作品が登場。『布団』(田山花袋)なんて渋い演目もありました。

 

丈さんは、これらの小説の大ファンというわけではありません。しかしながら、インタビューした際に、こんな話をしてくれました。

 

「僕は子どもの頃から辞書を読むのが好きで、それは欠かしていないんです」

 

意外な話なのですが、作家なども含めておすすめする本を言われて「辞書」と答える人は多いのです。日々、知識を得るにはストーリーだけでなく、言葉の持っている意味を感じるのが重要なんでしょう。丈さんもそんな一人なのかもしれない。小説に対しても、凡百の評論家の書いてきた解説よりも

 

「読んだうえで、自分自身の解釈を元にして朗読しています」

 

丈さん自身も出演したことのある、マックス・エー「官能小説」シリーズの原作を読んだこともあります。AV以上の映像を伴わない臨場感という想像世界に引き込ませてくれました。また小野不由美作品の怪談で会場を凍らせたり、花房観音作品では、丈さんをモデルにした江戸中の女たちを虜にする坊主「丈円」が登場する『半乳捕物帳』を朗読した回もありました。別の回でしたけど、花房先生自身が聴きに来られたこともありましたね。

 

どんな感じなのかを知りたい方は『表参道文學』公式通販があり、そこでバイノーラル録音のCDが発売されています。

https://omotesandobg.official.ec

収録作品抜粋〜宮沢賢治『雨ニモマケズ』宮沢賢治『よだかの星』森奈津子『人妻いじめ』ほかが収録されたこちらのCDをヘッドフォンで聴けば、どのような感動、どんな興奮が得られるのかが分かると思います。

久々に開催された『表参道文學』

2019年3月9日に開催された「其の十九」で一旦の終了があったのですが、10月4日に「秋の特別版」として久々に開催されました。この日はダミーヘッドマイクを使用しなかった関係上、ヘッドフォンは使用せず、通常の朗読劇の雰囲気で、丈さんが自由に動ける雰囲気となってました。

 

演目は、丈さん自身が「馴染みがないんです」と言いつつ演じてくれたのは、古典落語『時そば』。エッセイストの作品が入り、丈さん書き下ろし「水曜日、午前二十五時」という、夜中までかかる仕事をしている人ならではの時間解釈を使った官能ホラー小説でした。

おなじみの、蕎麦屋をおだてて勘定をごまかす場面と、どうにも上手く進まなくて失敗する場面の演じ分けは見事!落語を聴いていなかったから、演劇的な雰囲気たっぷり。書き下ろし小説での、公園にいるカップルの痴態を覗きみるシーンでの興奮の盛り上がりは、お客さんたちのハートと興奮を鷲掴みしちゃってました。

 

朗読だけでなく、トークタイムもあり、さらには記念撮影時間が設けられており、その熱量は半端なし。イベントとして大好評なので「お丈さま」のみなさんはもちろん「エロさの加減がちょうど良い」ということで「会ってみたいけれど……」なんて方もいらっしゃいました。

 

「魅了する魅惑のイケボイス」というのは、俳優さんでもよく聴かれるワードですが、大島丈さんのそれは、なみいる俳優やアイドルたちを凌駕する存在感。さらには「AV男優でなくてはできない」リアルとファンタジーの境目な部分が、たまらなくセクシーなのです。

表参道文學と大島丈が合体した理由とは!?

大島丈さんの官能的な声で、官能を内包する文学作品や、官能を表現する小説を読む『表参道文學』ですが、スタートした理由は何だったのでしょうか。

 

一般に朗読劇は、声優やアナウンサー、舞台役者などを起用して、数多く開催されています。朗読とは国語の教科書を読む小学生でも優劣が生まれるほど、訓練と素質が必要なわけです。「読む」という作業ですね。しかも音読が重要。

 

お芝居経験ということでは、AV男優もAV女優も、専門家からの訓練を受けている人はごく一部です。ドラマ仕立ての場合、きちんと台本はありますが、多少セリフを間違えたとしても、ニュアンスが完璧ならばそのままOKテイクとなります。理由は、そこにこだわるのはAVではないからです。

 

しかしながら、圧倒的な大声を出し、感じるという行為を全面に出しているAVは、訓練以上の訓練を行なっていることになる。大島丈さんのようなベテランAV男優ともなれば、それなり以上の経験を経ているのと、自分自身を出すという「役者」とはまた違う部分が大きい。よって、半端な演出をかけるよりも本人が一番、自分のどこを出せば観ている側に伝わるかを知っているのです。

 

そしてオフ会などでも大人気の丈さんの、甘くて渋い官能ボイスとダミーヘッドマイクを使用した、脳に直接刺激を与える朗読劇は、新しいジャンルを生み出す可能性があると、主催している『表参道文學』が判断してスタートしたのです。

AV男優もイベントをする時代になっている!?

トークイベントなどでも人気の高い大島丈さん。経験値はもちろん観ている通りに高いです。男優さんに話を聞く際、口説くことを眼目にして聞きそうですが差にあらず。男優さんの場合、SEXすることは大前提ですから、むしろ「その後もお互いが仕事ができるように接することができる関係性」の構築が重要です。

 

どうすれば優しくいられて、女子をその気にさせるかが大きなポイント。AV女優だって女子ですから、おだてに弱い子もいれば、逆もいる。お姫様扱いしてほしい人もいれば、スタッフの一員として扱ってほしい子もいます。それら性格をどのようにして見分けることができるのか。それぞれに気持ちよくすることができるのか。その達人なのです。

 

だからこそオフ会を開催すれば大人気だし、女優が出演するイベントであろうとも、丈さんが出演するとなったら、女子ファンが来場してくれる。イベントは、ファンが被ってしまうと、二人出しても2倍になりません。むしろファン層が違う人を呼ぶことで2倍のファンが駆けつける。それも男優ならばなおさら女優好きだけじゃない人が来てくれるわけです。

 

AV男優がイベントに登場する理由は、それだけではありませんが、大きな要因になっているポイントなのです。

まとめ〜そしてAV男優は人前に立つ

世の中が、AVに対して糾弾している状況は悪化していることは間違いありません。いくら人気あるAV女優であろうとも、コンプライアンスにがんじがらめの地上波テレビには本当に出なくなりましたから。webTVなどが今後を担う可能性はありますが、スポンサーというテレビの死活問題をクリアできないといけない。AVをモチーフにしたテレビドラマがいくら作られようとも、AVに良い影響が出ないのが証拠です。

 

いくら世間からのバッシングがあろうとも、時代背景をもとにしてどんどん増えていくAV女優志望者たち。一方でAV男優は「SEXが上手」なんて、自己判断でしかないものでできる職業ではありません。むしろ自己顕示欲が高すぎると、メインであるAV女優を作品中で殺しかねない。そんなAVが売れるわけはないので、AV男優は極端に増えず、信用における人たちでまかなっているわけです。

 

AV男優は、社会性の問題からいろいろと制限されているのは事実です。だからこそ、ある程度以上の収入がなければ仕事として成立しません。またSNSの登場によってファンとの距離感が縮まったのも確かでしょう。その結果「現場仕事」というよりも「人気ビジネス」の座にAV男優業も収まりつつあるわけです。

 

一度だけのファンサービスだとむしろ離れかねない、だからこそ繰り返し登場する。そしてイベント主催者はアプローチをする。よってAV男優はAVじゃないところで人前に立つ運命を背負いました。

 

人前に立つということは「何を見せる、聞かせることが、ファンにできるのか」が問題となり、資質が問われることになるわけです。森林原人さんのような著述業だったり、田淵正浩さんのように、いろいろなテーマでトークイベントをやられたり、トニー大木さんはアジアで活躍するバンド「トニーバンド」で動き回っています。他にもさまざまな男優の方々が、得意する分野を作り上げ、あらゆるイベントに呼ばれ、大勢のファンの前に立ち続けているのです。

 

AV男優のなかでも、特徴的なイケボイスを誇り、笑顔だけでなく険しい表情など、あらゆる顔を持つ大島丈さんが朗読的をチョイスしたことは、複合的な理由が重なっているわけです。

 

また朗読している姿が超カッコいいし似合うし(笑)次回の開催が期待されております。表参道文學公式Twitterや大島丈さんTwitterなどからの発表を待ちましょう。もしかすると近いかもしれません。

AVだけを観て応援すると簡単に言いますが、ストリーミング定額配信などがスタートしており「ただ観るだけ」だと厳しくなりそうなAV女優とAV男優。AVが崩壊する事態がないと言い切れない(もしかすると地下化してしまうことになるかもしれません)。

 

閉塞的な状況をだからこそ、大島丈さんが小説を読み、キャラクターを演じている姿は、男女問わずに、応援する理由があるかもしれません。あなたがAV女優を好きならば、AV男優の姿も、もっとじっくり冷静に見つめるのはいかがでしょうか。

執筆=麻雅庵(https://twitter.com/an_asaga_otft)