今回のSODアーカイブスで紹介するのは…オムニバス形式でさまざまなシチュエーションの手コキが楽しめるのが『菅原ちえ監督の手コキコキコキ』だ。
男子トイレに突然現れた女社員役の牧原れい子が、耳元で淫語をささやきながら手コキ、路上チ○ポみがき手コキ屋にふんした小松綾乃が、どんなキタナイチ○ポも1回たった50円でシコシコ。
女の子4人による、四人四色の違いが見られる手コキ道場など、たっぷり手コキが楽しめる。
ネーミングの巧みさ手コキブーム到来!?
『手コキコキコキ』なんとも秀逸なタイトルだ。
とくに、コキコキと繰り返すことで、あら不思議、手コキが本来持っている暗くてミジメなイメージが一掃されるのだ。
おそらくは千津理香子氏による発案だろうが、企画だけでなくキャッチーなネーミングができるところに、千津氏の非凡な才能があらわれている。
今でこそ、手コキといえば女の子にも大抵通じる単語になってはいるが、本作が発売された1999年当時は、もっぱら風俗業界で使われる用語だった。
口や素股で射精できない人、またはすぐにイッてしまう人、もったいないからと敢えて我慢しているうちにイケなくなってしまった人などに対して、最後の手段として、手っ取り早く射精に導くのが手コキであった。
人からされるのならばまだしも、アダルトビデオの映像として、他人が手コキされている場面を見て、興奮するという発想が、業界人にはまったくなかったのだ。
セックス=本番であり、生本番が当たり前の時代を経験しているベテラン監督ほど、手コキの一体何がいいのか理解できないから、手コキがメインのAVを撮るなんて、ありえないと考えてしまう。
しかし、AVユーザー、特にセルビデオユーザーはセックスよりも手コキに親近感をおぼえ、手コキの大ブームが起こるのだった。
ありそうで、でも実際、広いに日本の中には、どこかにあるんじゃないか?と思わせる妄想系職業シリーズの代表作『ち○ぽ洗い屋のお仕事』の原点は、この『手コキコキコキ』なんじゃないかというのが、今回のテーマ。
『手コキコキコキ』の1コーナーに、ち○ぽ磨きという商売が登場する。これは言うまでもなく、靴磨きのち○ぽ版であり、靴を磨くかわりに、ち○ぽを磨いてくれるというサービスだ。あまりにもバカバカしいが、これが現実にあったとしたら、ちょっと時間が余った時などに、つい利用したくなるのではないだろうか。ただし、公衆の面前で、堂々とち○ぽを出すわけにはいかないので、靴磨きと同じように行うのは、さすがに無理がある。では、磨くのではなく、洗うのであればどうだろうか。まだ洗体マッサージ店などが生まれるずっと前の話である。
今ではほとんど見られない、女優名ではなく監督名押し作品
AVの面白いところは、同じ○○シリーズでも、作品によって監督が異なることが多いこと。
映画ファンは、まず作品を選ぶときに監督の名前を気にする。
しかし、AVにはそういった監督の名前を気にする文化がなかった。
そもそも監督名をよく考えずテキトーに付ける人も多いので、同じ人が別の名前で撮っているなんてこともある。
そんな中で、菅原ちえ監督は、女流監督でありながら名前と顔を出して、作品のタイトルにまで付けてしまうのだから、インパクトがあった。
女流監督だからという強烈なアピールがあるわけでもなく、名プロデューサーでもある高橋がなり氏の演出を間近で学んできただけあって、ユーザー目線での作品づくりには定評があった。
作品中に顔は出さなくても、女の子に指示をする声を聞く限り、言われた女の子も同性ならではの気やすさから、ゲスい要求についつい応えてしまうのが魅力だった。
今後、手コキはどこへ向かっていくのか?
手コキはブームを過ぎて、作品の中にすっかり定着したが、今後どの様に発展する可能性があるのだろうか。
原点とも言える本作を振り返りながら考えていきたい。
手コキは単独は弱く、淫語やコスプレなどのシチュエーションが加味されることで、威力が増す。
しかも、そのシチュエーションが、手コキをする必然性があれば、さらに良い。
たとえば、リクルートスーツを着た女子大生が面接官に手コキを要求されるとか、保険の営業レディが客から契約を条件に手コキを迫られるとか、ベタな展開でも、現実にありそうな状況を、いかに創造していくかが、監督の腕の見せどころだ。
また、手コキに付きものの淫語に関しても、チ○ポ、チ○ポと連呼するだけでなく、その設定に応じた用語をいかにさりげなく盛り込むかが重要ですし、指の動きをしっかり見せるモザイク処理も高度なレベルで求められる。
とにかく今回紹介した『手コキコキコキ』という作品が生まれていなかったら、未だにAVは本番至上主義を貫いていたかもしれない。
手コキの価値が見出されたからこそ、自由な発想が受け入れられ、ここまでAVが発展したのではないだろうか。手コキの可能性を追求した『手コキコキコキ』を見れば手コキの魅力を再発見できるかもしれません。