キカタンブームが起こり、AV女優にも生存競争が繰り広げられるようになった2000年代。
ただ可愛いだっけじゃツマラナイ、そんなオタクの願望を小さなカラダで受け止めた元祖コスプレ女優・木下いつきの代表作『コスプレぶっかけ100連発 木下いつき』が今回、紹介する作品だ。
木下いつきが命の次に大事だと公言する、さまざまな自前のコスプレ衣装に身を包み登場し、激萌えな姿で、ザーメンに立ち向かっていく。
大切な衣装だけでなく、可愛い顔までもザーメンまみれにさせながら魅せる〝萌えエロ〟な木下いつきワールドが、たっぷりと堪能できる大作だっ!
セルビデオの申し子、賛否を巻き起こす!??
木下樹がデビューした2001年のAV業界を振り返ってみる。
SODの『女柔道家VSレイプ魔』がヒットし、高橋がなりは日本テレビの『マネーの虎』に出演していた。
かつては浅草キッドのようなマニア受けする芸人が、マジックミラー号のことをメディアで口にすると、知っている人だけがニヤリと笑うような状況だったが、この頃からSODの名前は一気にメジャーになっていく。
飯島愛原作の映画『プラトニック・セックス』が公開され、話題になったのも19年も前の話だ。
動画配信の技術が発達し、海外サイトが日本のAVの無修正版を配信するサービスを始めたことで、国内のAVを脅かしつつある、そんな時代背景の中、木下いつきはAV業界に足を踏み入れた。
木下いつきの同期は堤さやか、桃井望、単体女優では黒沢愛、早坂ひとみ、天野♡こころ、神谷沙織など。
元来、頭のいい彼女はこういうメンバーの中で生き残っていくためには、ルックス以外にも何か武器がないと対抗できないと考えたに違いない。
そこで生まれたのがオタクでコスプレ好きというキャラクターだったのだが、後に物議をかもすことになる。
命の次に大事な衣装に降り注ぐザーメンの雨
『カードキャ○ターさ○ら』や『ちょ○っツ』といった懐かしいタイトルのキャラのコスプレをした木下いつきが、ザーメンまみれになるという、内容はいたってシンプルな『コスプレぶっかけ100連発』。作品の中でやっていることはいたって王道のザーメンモノだ。
しかし発売当初から、一部のコスプレ好きの間では、本物のコスプレイヤーなら、衣装が汚されるのは許せないのではないか、と議論になっていた。そこからアンチ木下いつきも巻き込んで、粗探しに似た形でバッシングが起こった。
この件に対する業界人たちの率直な感想は、
コスプレって言われても、元ネタもわからないし、何をそんなに熱くなっているんだ?
という冷ややかなものだった。
オタクを取り込みたいと思いつつも、オタクを相手にすると面倒だという印象が強すぎて、それ以降オタクを相手にすることはほぼ消滅していく。
決してイロモノ女優ではない才女、木下いつき
最後に木下いつきにつて語りたい。
正直な感想を言えば、当時、木下いつきより可愛い女優はたくさん存在した。
しかし、あれから19年たった今、その子たちの名前を思い出せるかというと記憶があやしい。そういう意味では木下いつきは、あの時代を代表する女優の1人だったと認めざるを得ない。
彼女がAV界に出現したとき、熱狂的なファンを掴むと同時に、その頃にしては珍しいくらいアンチ・木下いつきも作った。自我を前に押し出す彼女は、おとなしくて自己主張をすることがないオンナノコが好きな保守的なAVファンにとっては、鬱陶しい存在に映ったようだ。
ただ木下いつきの凄いところは、その批判すらも話題にして知名度を上げていった点にある。
結局、何かを表現したいときに、何の反応もないことが1番ダメなことだとわかっていた彼女は、バッシングに対しても真っ向から反論することで、今で言う炎上商法で注目を集めることに成功した。
SODとの専属契約終了後に、ディープスの社員監督として活躍していたこともAV女優のセカンドキャリアとして興味深い転身だった。2003年に引退してしまったが、もしそのまま続けていれば良作を生んだ気がしてならない。