仕事が楽しくて仕方がない、と思いながら日々生活をしている人というのは、世の中にどれだけいるものなのか。おそらく、探してもなかなか見つからないはずだ。楽しんでやれる仕事…それに出会えることはどれほど幸せなことか、考えたことがあるだろうか。
今回の職業「AV」女優は2006年にAVデビュー、同年出演した人妻作品が大ヒットし人妻役の作品への出演が増えるにつれおじさまたちの心と股間を鷲掴みにし、デビューから1年も経たないうちにトップ女優になり、2019年の現在もAV女優として活躍している加藤ツバキさん。変わらぬ美貌でファンを魅了し続けるツバキさんのAV女優感に迫ります!!
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「昔から自分は主役じゃなくて、今で言うとバイプレイヤー、なんでもやるぞみたいな立ち位置が好きなんですよね」
──生のツバキさんは、画面で通してみるよりもセクシーな感じがします。
そうですか?でも、普段は全然セクシーなんかじゃないんですよ。部屋着で1日中過ごしたりしてますから(笑)。
──それは意外ですね。AVを始めたのも、エッチが好きだったからというわけではないんですか?
もともとセックスは好きですけど、AVを始めるきっかけは違いますね。当時、アパレルの仕事をしてて、お給料が安い上に洋服も買わなければいけないからバイトを探してたんですよ。
本当に時間がなかったので、夜の仕事を中心に探して、キャバクラの体験入店も1度行きました。だけど、初日におっぱいを揉まれて、これはないなって(笑)。そんな時に、AV事務所の求人を見つけて、それに応募したのがきっかけです。
──ツバキさんがAVを始めたのって、何年前でしたっけ?
2006年デビューなので、13年前です。
──その時期だと、まだ応募してAV女優をやろうって人は少なかったのでは?
そうですね。だから、メーカー面接とか現場とかで志望動機を聞かれて答えると「えっ!?志願兵なんだ」ってよく驚かれました(笑)。
──しかし、キャバクラで胸揉まれて嫌だった人が、よくAVを選びましたね。
どうせ揉まれるならプロがいいって、すごく振り切って考えちゃったんです。若さですね。
──AVに関しての事前知識って、どの程度ありました?
AV自体はラブホで見るくらいで、好きな女優さんがいたわけでもなく、漠然とした知識だけでしたね。あ、ただパラダイステレビでやってた裸の通販番組は、すごく好きでした(笑)。
──2006年くらいだと、まだあまりいいイメージはなかったのでは?
そうですね。事務所へ面接しに行くときは、怖い人が出てこないか心配でしたからね。
だけど、そんなこともなくて、いろいろと話を聞いてみたら、やってる人も別に売り飛ばされた人がやってるわけじゃないんだってわかって安心したので、じゃあやってみようって。
──こんなに続くなんて思ってましたか?
全然。1年くらいやって、ちょっとお金が貯まったら辞めようかなって思ってましたから。アパレルの仕事を続けるつもりだったので、最初はパブ全NGだったんですよ。
──その予定が変わったのはなぜです?
1年経ったくらいだったかな、アパレルの仕事の方でメンタルをやられて、3ヶ月休むくらいまでぶっ壊れちゃったんですよ。
その時期は完全に引きこもってたんですけど、ちょっと良くなったとき、アパレルの方には行けないけど、撮影なら行けたんですよね。AVの仕事は楽しかったので、半分リハビリみたいな感じでやってました(笑)。
それから、会社は辞めてしばらくはAV1本でやっていこうってなったんです。
「エロ以外でも、お芝居とかコントとか歌とか。AV女優は「何でも屋」なんだなって思いましたね(笑)」
──AVの仕事が楽しいっていうのは、どういうところが、ですか?
現場の方たちって、それぞれの道のプロで、結構きちんと作ってるじゃないですか。その一員として、ものづくりに携われるっていうのがありましたね。
あとは、カメラを前にすると、ちょっと違う自分でいられるのが気持ち的にホッとするというか。普段の自分ではできないけど、加藤ツバキならできる、そういうのがありましたね。
──もともと、表舞台に立ったり目立ったりするのは好きだったんですか?
好きではなかったですね。学生時代、生徒会長をやってましたけど、人前でスピーチする時は毎回めちゃくちゃ手が震えてましたから。内申点を取るためとはいえ、今考えればよく選挙なんかに立候補したなって思いますよ(笑)。
──そんな優等生が、どう歩んできたら、そんなにセクシーになるんです?
もともと持ってる妖艶さ、セクシーさっていうのはあまりなくて、AV女優になってからどんどん身につけていったんですよ。現場ごとに「よし、今日はこれを学んだぞ!」みたいな(笑)。
あとは共演する女優さんがいたら、その人からいいものを盗んでいったり。それで13年経つと、こういう人ができ上がるんです(笑)。なんか職人みたいですね、私。
──それは逆にすごいなって思いますよ。すごく自然な感じがしますから。でも、大変だったんじゃないですか?
淫語とか、最初の頃は全然しゃべれなくて、単語表を始まる前にめっちゃ読んだりしてましたね。言葉責めとかも、何を言えばいいのって感じでしたし。
ただ私、興味を持つととことんまで追求したいタイプなので、ツラいとかはなかったですね。
エロ以外でも、お芝居とかコントとか歌とか、誰にも教わることなく「はい、やってくださいね」っていう感じだから、途中から私、AV女優は「何でも屋」なんだなって思いましたね(笑)。
──そんなにいろんなことをするなんて、最初の頃は思ってもなかったでしょ。
本当に!カメラの前で裸になってセックスをする、だけどそれもすべて男優さん任せだと思ってましたからね。
──AVの仕事自体が嫌になって、辞めようと思ったことはこれまでありました?
嫌で辞めようと思ったことはないですね。人間関係でイラついたり、自分のパフォーマンスがダメで落ち込むことはありましたけど、それで仕事が嫌になることはなかったです。
だけど、3年5年7年と、ちょっとキリのいいときに辞めようかなと思う時期は来るんですよね。
3年目はメーカーを1周してちょっと暇になったので。それでも意外と仕事がポロポロきたので踏みとどまりました。次の5年目は結構ヤバかった(笑)。その時期に、もっと仕事をしたくて事務所を変えたんです。で、移籍したら名前を変えないといけないと思って改名したら、全然仕事がこなくなっちゃって(苦笑)。
すぐに加藤ツバキに戻したらなんとかなりましたが、あの時は本当に辞めようかなって思いましたね。7年過ぎたあたりからは、とにかく10周年までは頑張ろうっていう意地でとどまった感じです(笑)。
──意地の10年は見事越えましたが?
10年を過ぎたら、ふっと力が抜けて、他のこともいろいろやりつつ、AVのお仕事はあればやりますっていう感じですね。
──他のことというと、よくあるタレント系の仕事とかですか?
いえ。最近、そういうのを目指す子が多いですけど、私は考えたこともないです。他の仕事といっても、全部AV関連ですね。
最近は、裏方として衣装を揃えるお手伝いとかしてます。服は好きなんですよ、もともとアパレルで働いてたくらいなので。現場を知ってるから、どういうものがほしいのかというのを詳しく言わなくてもわかるっていうのが楽みたいで、ちょこちょこお願いされてます。
厳しい予算の中でのやりくりは意外と大変ですけど、それを1つ1つクリアしていくのもまた、作品をつくるのに近いものがあるので、楽しいですね。
──監督に挑戦するとかは?
撮ってみたいって思うことは、あるはあるんですけど、どうやって実現させればいいのかわからないので(笑)。
将来的にはそういう道もありなのかぁとは思ってますけど、AV女優の看板は下ろさず、そこに何か他の肩書きを付けられる感じにしていければと思ってます。
──生涯現役でいたい、と?
そうですね。この前、手相を見てもらったら「あなたは60まで今の仕事をしてます」って言われたんです。なので運命には抗わず、姑役でAVに出られたらいいなって思ってます(笑)。
私、昔から自分は主役じゃなくて、なんでもやるぞみたいな立ち位置にいて、その居心地が好きなんですよね。今で言うとバイプレイヤー、「あの人、なんかいろんなことしてるよね」くらいの見られ方がちょうどいいなって思ってるので、年齢を重ねてもそんな感じでAVに関わり続けられたらいいなって思ってます。
「万人に受け入れられる仕事ではないっていうのは、思ってます」
──今後やってみたいこととかはあります?
なんだろう…これって固まってるものはあまりないんですけど、とりあえず今年やってみたいのは、名刺代わりの紹介映像を作るというものですね。私はこういうことしてます、というのがわかる感じのものを。
──それは、一般の人にも見せる感じ?
メーカー面接とか、最近はあまり行かないので、その代わりになればいいかなって考えてましたけど、一般の人に見せるのもいいかも。
「AV女優 加藤ツバキ」っていう名刺を作って、裏面にQRコードを付けて、それを読み込んだら映像が流れる、みたいなの(笑)。
──私の仕事はAV女優だ、というのを胸張って言えるんですね。
もちろんですよ。さすがに親には言ってないし、墓場まで持って行こうと思ってますけど、それ以外の人には全然言えます。最初の頃はさすがに言えなかったですけどね、会社的なこともあったし、当時は今と比べて世間の見方が厳しかったので。
──13年前だと、そうですよね。
友達とかに話すと、「大丈夫なの?」とか「いつ辞めるの?」とかのリアクションが多かったですね。
でも、だいぶ世間の見方が変わって、それに伴ってみんなのキャパも広くなってきたのか、だんだんと受け入れられるようになってきましたね。
──受け入れられない人に対しては、どう思います?
万人に受け入れられる仕事ではないっていうのは、思ってます。価値観はその人次第だから、別に認めさせる必要はないと思ってますね。
昔よく親から「よそはよそ、うちはうち」って言われませんでした?その精神ですよ、ホント。
でも、否定する人ほど、AVってこうなんだよっていう話をすると、不機嫌な顔しながらもっと聞かせてくれオーラを出しますよね(笑)。
──ホントは興味津々なのにねぇ。そんな人には負けずに、これからも頑張ってくださいね。
ほどほどに頑張ります(笑)。これまで、仕事を途切れさせたり、自分を止まらせたりすると、なんか全部終わる気がしてたんで、不安で走り続けてきたというのがあるんですよ。本当に怖かった。
でも、今年はその怖さを認めて、気合を入れ直しつつ、どこかで1度長期休みを取って再スタートできたらなって思ったりしてます、初心にかえって。もう1回デビューしたいくらいですよ、SODさんで撮ってほしいですね(笑)。
初出:ソフト・オン・デマンドDVD 2019年4月号 Vol.94の内容を一部加筆修正しています。
≪加藤ツバキSODグループ出演作品≫
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