10/25(金)テアトル新宿『解放区』公開記念トークイベントレポート
10/25(金)映画『解放区』は公開2週目に突入した。金曜日の夜だが、昼間の豪雨でこんな日に来てくれる人がいるのだろうか?というスタッフの心配をよそに、好奇心たっぷりの映画ファンたちが劇場に足を運んだ。
公開より連日開催されているトークショー。ゲスト達は太田信吾監督の強い希望によりオファーされており、この日も強烈なゲストを迎えることとなった。
司会の高根順次(SPACE SHOWER FILMS)がステージに呼び込んだのは、『アラサーちゃん』を代表とする売れっ子漫画家、峰なゆか。そして太田信吾監督を大きな拍手が包む。軽く挨拶を済ませた後、太田が開口一番
太田「峰さん、今日の僕たちの服装はどうですかね?」
と尋ねる。司会の高根と太田はこの日、白いシャツを着ていた。峰が以前インタビューで“アラフォー男子は白いシャツで清潔感を保つべし”と語っていたので、この日は白いシャツで挑むと決めていたようだ。すると峰は天真爛漫にキャハハと笑い
峰「別にシワとかないのに、太田さんのシャツなんでシワっぽく見えるんでしょうね(笑)」
と2人の敬意に答えた。滑り出しは順調なようだ。ちなみに峰は公開前、映画『解放区』にこのようなコメントを出している。
ダメな人間を見るのが好きです。自分はまだマシな気がするから。
そのようにして多くの人の、そして自分の自尊心を保つ目的で西成のダメな人間を取材するディレクター志望の AD が、西成で日々を過ごしていく中で、西成在住のダメな人よりもっとダメな人間にあっという間に転がり落ちる。
はあ、ダメな人間を見るのはほんとうに愉快ですね。ダメならダメなほどにいい。
私よりもっとダメなやつ見せてくれ。という欲望に完璧に答えてくれる映画。
トークは峰のコメントからスタートした。
太田「峰さんから見て、この映画の人間の弱さだったり、男のだらしなさってどうですか?」
峰「私、すごい絵も下手で全然面白くない漫画を集めていたりして。こんなのでも出版してくれる会社がちゃんとあるんだ!って安心します。“底辺”というか、ヤバいものをどんどん求める傾向がありますね」
太田「それってすごい上から目線ですよね(笑)大丈夫かな。今日のトークショー」
峰「私がいう底辺って西成じゃないですよ!主人公の須山ですよ!もう本当にクズ(笑)。でも私、どうしようもないクズを見てるのが好きなんです」
太田「この作品は人間の弱さを、西成という街がただ何も言わずに受け入れてくれるところからスタートするんですね。須山の場合は、リアリティを撮りに行くという大義名分があったけど、なぜか上から目線で自分よりも弱者だと思ってる引きこもりを一緒に連れて行ったりして。そう言った意味だと須山自身は全然自分をクズだとは思っていないんです。この街は、まず受け入れてくれるという点では弱者にとっては楽園。キャッチコピーにもある“楽園”にはそういうメッセージも込めていたりします」
太田「だって、峰さんもクズを見るのが好きとは言っても実際に交際したいとは思わないですよね?」
峰「絶対にいや!(笑)私自身は表参道でティーとかしていたいもん。実はこれってすごい紙一重なの。私が実際に須山みたいな男性と、西成の飲み屋で意気投合して、一夜を共にしちゃってなんとなく同棲始めたらクスリを勧められたりしちゃってね。まあいっか、ってやり始めたらお金ない〜ってその辺のちょんの間で働き始めちゃったり(笑)そこにズルズル甘んじてしまうかもしれない自分が何処かにいるっていうのを知ってるから。なんだかんだクズを見たい!好き!って言ってる時点で、実は私も片足突っ込んでいるんですよね。」
太田「須山も自分はここの人たちとは違うと楽園に足を踏み入れて、そうやって染まって行ったと言うか」
峰「みんな自分は違うって思っていますからね」
冒頭、上品だが頓着なく話す峰に白いシャツを着たアラフォー男子が翻弄されていたのだが、トークショーを通じてまた『解放区』の新たな側面が見えたような気がした。弱者とは誰で、その弱さはどこから来るのかと言うことだ。
あっという間に時間が過ぎ、司会の高根から時間が迫っていることを告げられると
峰「次回作のご予定とかあるんですか?」
太田「いつか峰さんとさらなるクズを描いてみたいですね」
峰「(笑)JOKERを超えるリアルなクズの作品にしましょう!JOKER見ました?家とか広いし、口紅なんてハイブランドの使ってましたよ!解放区の方がリアルですよ」
と言うと会場全体が大きな笑いに包まれた。
太田「西成の街はこの映画を撮った6年前とは随分変わっています。もはやこの街は労働を搾取する街ではなくなりました。ただ、高度成長期のこの搾取が外国人労働者に移っただけのような気もしていて。まだまだ日本はこの問題を抱えていて、西成が歩んだ歴史を決して忘れてはいけないと思います。11月に僕と西成の街を巡る“西成街歩きツアー”も予定しています。大手リゾートが進出してきたり、かなり綺麗に変化してるのでどうですか?峰さんもご一緒に、西成でティーしばきませんか?」
峰「それなら私もいけそう!(笑)」
終始峰のペースで進行していったトークショー。太田は自らが演じた主人公、須山を峰が見たらなんと言うだろうと思って登壇を熱望したが狙い通り、全く違う切り口で『解放区』を語れたのではないだろうか。
<公開決定劇場>
10/17(木)|京都・京都国際映画祭
10/18(金)~|東京・テアトル新宿
11/1(金)~|東京・UP LINK 吉祥寺
11/1(金)~|大阪・テアトル梅田
11/1(金)~|大分・別府ブルーバード劇場
11/1(金)~|長野・上田映劇
11/2(土)~|愛知・名古屋シネマテーク
11/2(土)~|京都・出町座
11/9(土)~|神奈川・横浜シネマ・ジャック&ベティ
11/15(金)~|大阪・シネマート心斎橋
11/16(土)~|東京・UPLINK 渋谷
11/16(土)~|大阪・第七藝術劇場
11/16(土)~|兵庫・元町映画館
11/16(土)~|沖縄・ゆいロードシアター
11/23(土)~|静岡・静岡シネ・ギャラリー
上映決定|広島・横川シネマ
以降全国順次公開!
<映画『解放区』公開記念イベント>
西成の生き字引・水野阿修羅さん&監督と歩く西成まち歩き
●日程・全2回
1)11月2日(土) 11:00〜13:00
2)11月16日(土) 9:00〜11:00
●ガイド
水野阿修羅(地域歴史研究家)、太田信吾監督
●集合
カフェアース/大阪府大阪市西成区太子1-3-26
●参加費
1000円/当日支払い。いただいた参加費は西成の炊き出しカンパに活用させていただきます。
●備考
・そのほか、現地までの交通費・宿泊費・まち歩き中の食事などの実費は各自での支払いになります。
・まち歩き中の事件、事故、怪我などは主催者側では一切責任を負えません。参加者様の自己責任なりますのであらかじめご了承ください。
・取材、DVD特典収録のための記録撮影などが入る可能性がございますこと、あらかじめご了承ください。
●定員
各回20名(人数上限になりいしだい、締切にさせていただきます)
●申し込み方法
メールの件名を「西成まち歩き申込」とし、本文に氏名・電話番号・メールアドレス・参加希望回を明記し、以下のアドレスまで送信をお願いします。受付は当方からのメールの返信を持ちまして受付完了となります。数日内に返信がない場合はお手数ですが、再度ご連絡をお願いいたします。
申込Mailアドレス:info@hydroblast.asia
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