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プロローグ〜セクシー女優の歌を聴いたこと、ありますか?
AVに出ているから、AV女優と名乗っていたはずが、なんか知らない圧力によって、「セクシー女優」と呼ばれるようになった女の子たち。そんな彼女たちは、AVに出演するだけでなく、いろいろなお仕事をして、AVをエンタメとしてアピールしています。
自ずと自分自身のアピールにもなるわけですが、AVの売れ行きと外向けのお仕事の人気は、必ずしも正比例しないことが多く、それは本当のプロモーション活動なのかという声も聞こえてきます。
そういわれても、大昔のように放っておいてもAVがジャンジャン売れた時代とは違います。DVDというメディアが縮小する方向に向かっているのも事実です。欧米なんかはCDがストリーミング配信にほぼ変わってしまったように、AVにおけるDVDが配信ビジネスに完全になるのかとか、ストリーミングがメインになるのかと聞かれれば、未だに答えは出ていません。よくミュージシャンがボヤいているように、DVDやCDで売れる方が利益率は良いとは言われるのが、商業ベースです。特に日本はDVDも書籍も、問屋ベースで存在していますからね。一気に切り捨ててしまうとその業界ごと傾いてしまいます。
撮影付きDVD販売サイン会がメインのPR手段になっていた時代もありました。東京・秋葉原は、毎日どこかでセクシー女優サイン会が開催され、日曜日ともなるとファンは大忙しで、店舗を駆け回っていました。そんな日が懐かしく感じますね。あっという間に収束すると思われていたコロナ禍の日々は、丸2年経った今でも続いています。
サイン会やトークライブなどは出演者とお客さん、お客さん同士のソーシャルディスタンスをキープしつつ、以前とは違う規模になって開催されていますね。マイナスな視点で考えても仕方がないと、規模と内容を変えて、リアルイベントは徐々に開催されるようになってきたことに幸せを感じつつも、毎日発表される感染者数をチェックしつつ、社会生活を送っている感じでしょうか。
そういう状況から開催されるようになったのが、ミルジェネ主催ライブイベント「月で逢いましょう」です。生演奏だからこそ伝わるリアルな声。出演するセクシー女優さんの声などに合わせ、演奏に強弱をつけ、引き立たせるパフォーマンスを行うミュージシャンは、ギターとキーボードのふたりのみ。コーラスも彼らがつけてステージの上は最小限度なれど、エネルギーたっぷりなパフォーマンスを行なっているのです。
今回の2022年1月25日に開催されたライブのミュージシャンは、ギタリストが福田正人、キーボードが平方玄でした。どちらも大評判のハイレベルミュージシャン。そして楽しそうに女優たちの歌を支え引っ張り、時には流れに合わせるという心地よい空間を作り出すミュージシャンです。
そして主人公は、AMATSUKA。FALENO専属である天使もえちゃんの歌手としてのアーティストネームがAMATSUKAです。その活動歴は長くオリジナルソングも持っています。そんな彼女のステージのお話です。
みなさんはAMATSUKAの歌を聴いたこと、ありますか? 気持ちいいほどの空間を作ってくれるのです。
「月で逢いましょう〜AMATSUKA」その確実なまでのパフォーマンスに酔いしれました!!
まずセクシー女優のライブと言われて、「セクシー女優の歌を聴く意味ってなに?」みたいなことがあると思います。そういうタイプは、まずライブにはほぼ行ってない人なんですけどね。しかしながら、セクシー女優は、ライブとかレコーディングとかマッチングが素晴らしいです。もしかすると演技よりもマッチングは良いかもしれません。
セクシー女優のお仕事、それはAVを撮影することです。事後の編集が入るとはいえ、ほとんどその場での一発勝負です。もちろんある程度の流れや内容は決まっているわけですが、それを忘れてしまうと意味がなくなります。これ、ライブにおける鉄則の近似値ですよね。
そして、演出が入るとしても、基本的なパフォーマンスは舞台の上の人たちが決めるというのが、とてもAVっぽい。取り決めがあり音楽としての大原則があり、それは必ずやらないと意味がなくなるのですが、もし瞬間的に忘れたとしてもそれを取り返すことは可能です。そしてライブひとつひとつにテーマが感じられるわけです。例えお膳立てをスタッフおよび演奏者たちがやってくれたとしても、最後はセンターに立っている女優自身。これもまたAVにどこか似ている部分ですね。
そして、そういうAVとの近似値をせずともハイレベルを展開してくれるのが、AMATSUKAのライブパフォーマンスです。
セクシー女優のライブは、カバーをメインとしているのは本業ではないのでごく当たり前のことです。AMATSUKAは「innocent Angel」など、オリジナルソングを持っていますけどね。ただオリジナルがあれば良いって話でもないのが、歌の世界です。
カバーを歌う場合、カラオケと同じような気分で歌うと全然違ってしまいます。オリジナルを聴いて、どのように歌っているかを知り、自分の中で昇華する。ここまでの作業がライブ前にできたならば、「歌手」とか「アーティスト」と呼んで構わないでしょう。これができていないことが多いです。これはセクシー女優に限った話ではありません。アイドルだって同じように、オリジナルをどこまでちゃんと聴き込んでいるかの違いで、同じ楽曲を歌ったりパフォーマンスしたとしても、仕上がりが全く違ってしまうのです。
この意味で考えると、AMATSUKAは、現在のセクシー女優のライブでは他の追随を許さないほどの、素晴らしいさと再現性とオリジナリティがあります。
「なんでもないよ」「シュガーソングとビターステップ」などの、男歌であり、オリジナル側に猛烈な個性がある楽曲でも、崩すことなくカバーとしてパフォーマンスをしています。かなり音程的にも難しい楽曲の場合、音程が揺れてしまって、危なっかしいことがありますが、ここに関しての迷いもなく、安定したパフォーマンスは、興奮がどんどんと上昇していくのです。
「ワールドイズマイン」「カブトムシ」「小さな恋のうた」などの、女子ボーカルのパフォーマンスに関して、本当に彼女のオリジナルなんじゃないかというくらいに完成されていました。これだけ有名な楽曲だと、聴く側もシビアになってくるし、間違いなどは発見されてやすいわけです。音楽の見方聴き方としては、「?」な行為ではありますが、現実、そういう聴き方をしてしまう人は多いです。
そういう人たちを、パワフルに跳ね除けるというよりも、「きちんと聴かせて納得させ、感動に導く」という感じ。ベタ褒めしすぎに思われるでしょうけれど、実際にAMATSUKAのパフォーマンスを観たら、理解できると思います。オリジナルアーティストですら、歌い続けていくうちに、原曲からアウトしていってしまうことが多いにあります。そうではなくて、オリジナルを自分の中に取り込んで、さらに聴かせる。これって、ちゃんと聴き込んでいることの証明でしょう。
楽曲やアーティストが大好きで、聴いているつもりでも、カラオケになると歌えないなんてことありますよね。あれこそ、「思ったほど聴き込んではいないので、細かい部分がわからない」という証明です。まぁカラオケならば、それでも楽しければ許されるでしょう。
AMATSUKAの場合は、何度も書くように、「オリジナルを損ねることなく、自分の歌としていく能力」が長けているといえるでしょう。プロシンガーよりも上の部分があると思います。
そして彼女には、オリジナル楽曲があります。「クローゼット」「きみとパンツ」「あいのうた」など。このライブでも披露していました。これに関して、ギター&キーボード+コーラスという編成に合わせてアレンジされているわけですが、そういう意味では、オリジナルよりもさらに上。そして生ライブであることを実感できるパフォーマンスを披露してくれていました。
アンコールラストで披露された、彼女のオリジナルであり、パワーソングとしてライブを盛り上げる楽曲「innocent Angel」は、エレキなロックアレンジとは違うアコースティックギターとピアノなのにも関わらず、激しくロックしていました。バックにパワフルなバンドを背負ってのパフォーマンスとはまたひと味違う雰囲気。特にファンが声を出せないという部分において、マイナスになってしまっているのが、コロナ禍におけるライブパフォーマンスです。ここを跳ね返すのは、かなり至難の技。コール&レスポンスが普通というライブシーンを通過しているわけですから。
バンドサウンドなアレンジと、ファンとのコール&レスポンスによって、ファンから大いに支持されてきた「innocent〜」。ハンデを理解し、さらにパワフルに変えてしまったAMATSUKAの音楽把握能力と、ライブパフォーマンスの素晴らしさです。
さらには会場の人たちとひと味もふた味も違うのが、配信ライブの完成度の高さです。「月で〜」は、定点映像が多くその出来も疑問符が残るような配信ライブがある中で、圧倒的に違うレベルを目指しており、ハイレベルなものを聴かせてきました。会場となっているライブハウス「三軒茶屋Grapefruit Moon」のスタッフによるまさにプロフェッショナルなクオリティです。
音は、聴こえる側のデバイスによって実は違ってしまうのですが、それを理解した上でのミキシングが行われています。なので、会場で聴こえるサウンドとも違います。映像も複数台をリアルタイムでどんどんとスイッチングが行われ、臨場感がたまらないです。
これに輪をかけてくれるのが、AMATSUKAの動きです。定点カメラだけでなく、動きに細かく対応するカメラマンがついているカメラもあります。なので、観ている側に視線を送るシーンだなというタイミングがわかるわけです。そこに対してドンピシャに対応するわけです。
会場に行きたいという声も多いにあるでしょう。AMATSUKAもMCで、「アリーナ!とか言ってみたいですよね」と言ってましたけれど、現状では微妙です。そんな中での配信ライブは、自分自身の環境でライブを観れると期待されていたのですが、意外とただ流しているライブが多かった。アーティストも甘んじてしまっているものが多かったです。そこに関して、レベチ(レベル違い)なカメラワークとスイッチング。さらにミキシング。そこに状況を理解してパフォーマンスするAMATSUKA。ここまで素晴らしいライブ、なかなか無いクオリティです。
AMATSUKAが表現しようとしている世界観。そしてライブ会場のファンだけでなく、配信の向こう側にいるファンも含めての一体感を感じさせてくれるパフォーマンス。セクシー女優がどうこうということで、観ない聴かないというのは、損していると感じさせてくれるレベルです。
1.ワールドイズマイン/supercell
2.なんでもないよ/マカロニえんぴつ
3.クローゼット/AMATSUKA(オリジナル)
4.きみとパンツ/AMATSUKA(オリジナル)
5.カブトムシ/aiko
6.シュガーソングとビターステップ/UNISON SQUARE GARDEN
7.あいのうた/AMATSUKA(オリジナル)
8.小さな恋のうた/高木さん(CV:高橋李依)
EN1.M/PRINCESS PRINCESS
EN2.告白/MY FIRST STORY
EN3.innocent Angel/AMATSUKA(オリジナル)
歌を観る意味を感じさせてくれるのがセクシー女優が歌うライブパフォーマンスです
AMATSUKAのライブに関して、昔からお付き合いのある、私、麻雅庵ですが、「常に前進する子」という印象が一番にあります。本業はと聞かれれば、AMATSUKAは、「セクシー女優」と答えるでしょう。しかし「だからといって、ライブを気楽なレベルや、手を抜いていいことは全くない」という彼女から出るポリシーを感じるのです。
さらにいえば、この「月で逢いましょう」は、「配信をメインとしたライブ。ステージでの生ライブを観れる人は、『ライブ中継を観ている』イメージ」です。サウンドも配信用にミックスされており、ライブを実際に観た人でも印象がまるで違っているので、得した気分になれるそうな。そしてパフォーマンスも、目の前のお客さんだけでなく、カメラの向こう側を意識したライブなのです。
こういう説明をしたとしても、実際の話、出演している女優さんたちからすれば、目の前のファンにアピールしたくなるもんです。2022年2月現在、規程としてファンはリアルな歓声は出せません。これはどのライブでも同じことですね。しかしながら目の前に大好きな女優さんが一生懸命に頑張っている姿をみれば感動するのは間違いない。手拍子などで声援に変わるアクションを起こして、アピールする。その姿はステージ上の彼女たちに伝わり、熱いライブとなる。正しいライブの見方、楽しみ方です。
そして配信の楽しみ方をいち早く知れる良さが、AMATSUKAと「月で〜」のライブにはあふれています。ライブ映像というと、カメラを全く無視するアーティストとかいますけれど、アイドルとか著名アーティストは、カメラを意識して目線を送るというファンサービスをしてくれます。
しかし、コロナ禍で始まった配信ライブですが、アリーナを使い、無観客でやっていた超がつく人気アーティストは、テレビを超えるレベルの映像と音というハイクオなものを見せてくれましたが、ライブハウスレベルに関して、最初の頃は本当に定点映像で、演出もなく動きもなく、スイッチングも「こんなもんでいいでしょ?」的な、どこか驕慢な映像が多かったのです。こういう映像を、テレビなどの音楽番組や、DVDでの編集されたライブを観ている人たちが満足できるわけありません。
そういうレベルにあわせなかった「月で逢いましょう」。キープしてきたクオリティに対して、敬意をはらい、一緒に演奏しているミュージシャンに敬意を払い、開催されている配信ライブ。求めているもの以上のものを提示できているのが、セクシー女優というのがポイントなのです。
映像化されることを生業としているセクシー女優は、止まることなく動き続けなければなりません。それをカメラワークと編集で、さらなる臨場感を出すことで、人々の興奮を呼び起こします。だからこそ彼女たち、セクシー女優のライブパフォーマンスには期待ができるのです。
これはまだまだキャリアの浅い組(デビューから2、3年組の女優たち)でも、理解して、選曲とかドレスとか、パフォーマンスを披露してくれるのです。それは「見られることのポイントを知った人たち」だからやれる。アイドルだって同じような感じなのですが、映像を必ず伴っているだけ、セクシー女優の方が上かもしれません。まぁアイドルもピンキリなので、坂道グループとかと比較するのは止めましょう。通っている場所と使っているお金などの規模が違いすぎ(笑)。
とにかく、中途半端で楽しめず、「もう配信ライブは止め」という人たちがいましたら、「月で逢いましょう」を一度ご覧になってください。得をしますので。ミルジェネ公式Twitterにライブ予定が出ております。
13日現在で、視聴可能なライブは、2月16日希島あいりさんちゃん。2月21日戸田真琴ちゃん。2月28日本庄鈴ちゃん。3月3日青空ひかりちゃんです。各自のTwitterや、ライブポケット(https://t.livepocket.jp/)で、検索バーに「月で逢いましょう」と入れると出てきますので、ご確認ください。
エピローグ〜セクシー女優とは、欲望の具現化だけでなく、感情の増幅装置でもあるのです。
セクシー女優とは、なんと多岐に渡る活躍をする存在になったのでしょうか。もちろん野望や欲望、そして理由など、入るには超えなければならない関門があります。そして超えた後に、さらなる「人気を得なければならない」という関門が出てきてしまったのが、2022年のAV業界です。
エンタメなので人気を競うとか当たり前と感じてしまった人は、ちょっとだけ常識が欠落しているかもしれません。まず人前でヌードになるという覚悟の先にセクシー女優という存在があるわけです。そこからさらに「人気が出るためにいろいろ頑張って」と言われても……という感じになってしまったセクシー女優は多いのかもしれません。今年も年末までに引退を発表している女優さんは多いです。それは人気者だけでなく、ここ4、5年でセクシー女優になった人も多いです。むしろ目立ちますね。
人気者でいられるというのは、それ相応の努力とか必要になります。その努力以上に容姿とかスタイルとかの天賦の才が必要です。それだけでなく、運の良さもまた必要になるわけです。セクシー女優という限られた職業につく。いろいろな運命がごちゃごちゃになっているけれど、運命として強い人でないと人気が出ないのです。そこにさらに「ガチ恋」的な感覚だったり、「アイドル」としての感覚が混ざっている。これがセクシー女優なのです。
溢れんばかりの愛情を噴出している存在であるセクシー女優。だからこそ、「歌うイベント」はいつの時代にも存在しますし、無くなりません。女優の中には、好きな音楽を表現できることに喜びを感じている人もいるでしょう。また「大勢の前は苦手だから……」と尻込みしている人もいることでしょう。
ただ言い切れるのは、彼女たちが歌うことのよって、楽曲の持っているリアリティがさらにますということです。時にはオリジナルアーティストよりも上になっている。特にオリジナルの人たちが既に歌っていないなんてこともあるのが音楽です。だからこそカバーソングは人気があるのでしょう。ただのノスタルジーだけではない何かがあると思います。
今回のライブにて、AMATSUKAがアンコール1曲めで披露していた「M」。もちろんラブソングであるし、別れ歌であるのは、歌詞を見れば一目瞭然なのですが、天使もえちゃんが歌うとなると、さらなる深読みもできるわけです。それは、「消えてしまう時間を思う」こと。こんな時代になっているならばなおさらです。
欲望をわかりやすく画面上に提示してくれる。SEXの最中の人の欲望とか快楽に蝕まれた瞬間を見せるAVという中に存在するセクシー女優。彼女たちがやることが増えたということは、人々が彼女たちに期待をし続けている証拠でもあります。
セクシー女優は、欲望を満足させてくれるだけでなく、あなたの感情を増幅させ、喜怒哀楽全てを爆発させるきっかけとなっています。「いたはずの恋人が目の前で歌っている」という幻想の中に浸ることができるのが、AVでは終わらない、セクシー女優との出会いの場なのではないでしょうか。
記事=麻雅庵