何もない2月は過ぎ去り、そして3月までが虚無と共に過ぎ去ろうとしている。
コロナはいまだ我々の生活のド真ん中にいつつ、さらには遥かウクライナではワールドウォーまで勃発しているのに、オマエは何を営業中止なんかでチマチマと愚痴っているのかという話なのだが、我らが店舗は開店休業の真っ只中、「スナックヤリマン」の名に似合わず、〝ヤレていない〟状態なのである。
そんな休業期間において、ただひとつ記しておくべき動きとしては、「スナックヤリマン」の記念すべき客第一号にして初のシャンパン注文客、そして我がモダンフリークス開催のエロイベントへの15年来の常連客、H氏の突然死を追悼するためのトークライブを2月16日に開催し、我らヤリマン軍団総出で盛り上げたことくらいか。
みずから中年童貞と名乗り、童貞のまま『クンニ選手権』に出場するなど、一介の客というには余りに逸脱した男ではあったが、当日は彼が愛したミュージシャンやオタク掲示板仲間が駆けつけ、ヤリマン軍団が披露するフェラチオ譚(する側)や乱交参戦秘話で大いに盛り上がった。
「死して尸拾う者なし」どころか、ヤリマン女性たちに骨の髄までしゃぶられるようなその〝おくられ様〟は、他人事ながらとても幸せな死に方に映った。
いつも観客席にいたと思っていたH氏は筆者の主催するイベントに通いながら、やがて常人とは異なる性体験へとのめり込んでいき、最終的にはヤリマンたちと同じ《ヤる側》に立っていたのである。
そう、今更ながら、ヤリマンはヤるからヤリマンなのであって、ヤラないことには慣れていないものだ。
たとえば昨今のコロナ社会には欠かせないワクチン問題一つをとってもそうだった。
日本人がお注射を打ち始めていた昨年、事務所でPC作業に没頭していると、突然手元に置いたiPhoneが鳴った。
反射的にその画面を撫でると、そこからはどこかで聴いたような声が。
「あれ、フクダさん?」
声の主は、SNSの参加型ラジオ「ClubHouse」で恋愛について(笑)生配信をしていた名古屋のヤリマン、チアキだった。
どうやらそのサービスでは、一番早く反応したリスナーが自動的に参加者となって繋がってしまうとのこと。
ここで「間違えました!ごめんなさい!!」で切るのではあまりにも芸がないので、この時はかなりの期間会っていなかったチアキとしばらく配信で会話してみた。
自粛期間明けの挨拶といえばこれしかない。
「ところで、ワクチン打った?」
するとチアキはこう言った。
「打ったよ!なんかかかりつけの心療内科がコロナのワクチン接種始めてて、お知らせがきたからさ、すぐ打ったんだよね」
もちろん何事にでも懐疑的で自らの体力に自信のない筆者はこう続けた。
「でもさ、副反応とか後遺症とか、けっこう怖くない?まだ治験もしてないようなアレだしさ……」
するとチアキは、瞬時に応えた。
「まあ私が死んだところで、それが人類のためになるならいいかな~って思うんだよね。だからちょっと前に子宮頸がんのワクチンの副作用が話題になった時もすぐ打ったんだよ、私(笑)」
こんなところにまでヤリマン女性のスケール感が……。
そう、ヤリマン女性はヤることへの躊躇いがないのだ。
否、むしろ、ヤラないという選択肢がないのかもしれない。
踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らな損的な思想と言おうか、見る前に跳べ的な精神と言おうか、とかく安全性ばかりを吟味してどこへも行けないようなしょぼくれた中年男(筆者)とは行動力がケタ違いなのである。
新種のワクチンが届いたと聞けば即座に打ち、祭りがあると聞けば迷わずに踊る、その過剰に前向きな精神の向こうに、膨大なセックス体験が見えるような会話であった。
ではまた来月、ヤる者たちの対岸から、最新のレポートをお届けしよう。
文と写真・福田光睦(スナックヤリマン代表/地下編集者)
店舗型イベント「スナックヤリマン」
毎週金曜日新宿歌舞伎町「SODLAND」内3階にて
営業中の「素人ヤリマン女性と飲めるサロン」(Produced by Modern Freaks Inc.)。
営業再開は4月から。
当日の営業時間、キャスト等詳細はTwitter:@snackyarimanまで。