―書いてる間に『孤独』に対する考え方に変化はありましたか?
この本は、先に着地点を作って書いてくって感じじゃなくて、けっこう何も考えずに、これに関して書きたい、でもこういうこともあったからこれも…って思いつく順に書いていったんですよ。
そういうやりかたで書いていったんですけど、『孤独』に対する考えかたがブレちゃうことはなかったです。
―やはりずっと『孤独』は大事に持ってたものだったと
そうですね。孤独に対する考え方はもとから持っていて、それで自分を守ってきたのもあったと思います。
でもこの本を書いたからと言って、孤独に対する気持ちを全部出し切れたかと言われるとそうではなくて、何も変わらず、何も減らないまま書き終えた感覚なんです。
まだまだ人に話せることがあるのかなって気持ちになりました。
―複雑だった家庭環境、学生時代、そしてAVデビューのことなど自伝的な内容も書かれています
自分の話をすることって恥ずかしいし勇気のいることですよね。活字になるってこわさもあったんですけど…でも私が有名なテレビタレントや本を何冊も出している作家さんのような存在だったら言いたいことだけ書いて伝わると思うんですけど、本の『はじめに』にも書いたんですが、私がどういう人間かを知ってもらうことで言葉の肉付きと説得力を増やしたかったんです。
そもそも20代のAV女優の女の子になんで人生の話をされなきゃいけないんだろう…っていうところで、最初に自伝的な内容を入れることによって、こういう人がこんな考え方をしてるんだよって知ってもらおう、と。1番最初に出す本っていうのもありますし…。
―生い立ちに関しては、家族のことなど赤裸々に書いていてびっくりしました。かなりさらけ出しているなあ…と…
生い立ちって生い立ちでしかなくて、書いてしまったことでどこか手放せる感覚があったというか、それについてウジウジしなくていい段階にきたから書けたのかなって思います。
悩んでる最中のことって人に話せなかったりするものだと思うので、『この子、大変だな…』って思われるかもしれないですけど乗り越えたものだと思って収録されていると読んでいただければと思います。
―AVデビュー時には『こんな風に考えていたんだ』っていうのがわかってAVファン的な視点でも興味深かったです。「自分はそこまで華々しいデビューじゃなかった」って書かれていました
これ、実は周りから言われたことも染みついているんですよ。
すごくありがたい気持ちなんですが、熱心なファンの方に『専属大型新人の子と比べてデビュー作の棚展開がすごく少なくて僕はもっと売れると思ってたのに悔しい』ってけっこう言われたんです。
でも実はこう言われることがつらかったんですよ。
デビューの時に、セルDVD店さんにご挨拶に行かせていただいてたので、棚展開の大きさとかなんとなくわかっていて、そんな中で自分でできることはなんだろうって思ってSNSやブログで文章を書いて発信したりっていう自分で運営できることや、イベントで来てくださるファンの方の名前を覚えるようにしようとか、いろいろ努力していたんですけど、それを差し置いて『棚の展開が…』って言われると『私ってこの人に恵まれてないって思われてるんだ』ってショックが大きいんですよ。
―本人には言わないで…と…
ほかの人と比べて展開されてるされてないってコンプレックスが刺激されるので、応援してる女の子には言わないであげてほしいです。
でも、だからこそ頑張れたこともあるんです。
そうやって一生懸命応援してくれる人へ、私が有名になって作品をたくさん世に出したりとか、知名度をあげて人気を獲得できるように頑張っていくことが恩返しになるのかなって。
なんとなく活動するんじゃなくて、そんな余裕がない時間があったのは今振り返ってみると良かったと思います。
―本を書くにあたって、今までを振り返ったり自分を客観的に見るっていう作業も多かったのではないでしょうか
私の活動を見てくれてる方には『意志が強いね』って言われるんですけど、人の言葉に影響を受けやすい部分もあるんですよ。
自分を変えられない軸や美学がある反面、それが世間一般にとって同じく正しいことや美しいことであるとは限らない…って、これは自分に対する自制でもあるんですけど。
人から強く言われたら従わなきゃって思ってしまうことがあるんですけど、本を書くにあたって改めて振り返って、こうだったな…とか、他人の言葉に惑わされすぎないように…とか、自分の輪郭を見つめなおす過程がありました。