大阪市による異例の内容修正指示、助成金返還、映倫R18+指定……2014 年に完成しながら5年もの間、劇場公開されることのなかった太田信吾監督の長編劇映画デビュー作である、超問題作『解放区』が10月18日(金)にテアトル新宿でついに 公開され初日舞台挨拶が行われました。
5年越しの舞台挨拶。テアトル新宿『解放区』公開記念 10/18(金)初日舞台挨拶レポート
10月18日、金曜日の夜。賑う新宿の街には予報通り雨が降り出していた。
この日、テアトル新宿では上映前から「衝撃作」「問題作」という刺激的な話題が先行し、2014年に完成していながら5年もの間一般公開が許されなかった、映画『解放区』が公開初日を迎えた。
先輩ディレクターとの理不尽な上下関係、制作時の被写体との接し方に疑問を持ちながらも、小さな映像制作会社で働きながらドキュメンタリー作家になる事を夢見るスヤマ。未だその途中にありながらも、夢を語り理解を示してくれる恋人もいる。ある日、取材現場での先輩の姿勢に憤りを爆発させてしまうスヤマ。やがて仕事での居場所を無くした彼は、自らの新たな居場所を探すかのように、かつて希望を見失った少年を撮影したことのある釜ヶ崎へ向かう。しかし、1人で問題に向き合えないスヤマは、東京で取材した引きこもりの青年を呼びつけたり、行きずりの女性に愛を語ったりと切実さに欠ける取材を続ける。少年を探しながら街をさまよう日々。やがて、自らの甘さがもたらした結果から、スヤマは一歩また一歩と道を踏み外し始めるのだった――
監督・脚本・編集:太田信吾
出演:太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤亮、岸健太朗、KURA、朝倉太郎、鈴木宏侑、籾山昌徳、本山純子、青山雅史、ダンシング義隆&THEロックンロールフォーエバー、SHINGO★西成ほか
製作:トリクスタ
制作:プロダクション::トリクスタ、ハイドロブライト
『解放区』上映委員会(トリクスタ+キングレコード+スペースシャワーネットワーク)
配給:SPACESHOWHERFILMS ©︎2019「解放区」上映委員会
ついに映画が解放され、114分後には満席の劇場から大拍手が巻き起こり、誰一人として席を離れる事はなかった。
満席のテアトル新宿で公開されたことで“映画”となった本作の上映後の初日舞台挨拶には、まるで懲役5年の刑期を終えた友を迎えるかのように、かつての仲間たちが勢揃いした。映画を観終わった観客の前に太田監督をはじめとするスタッフ、キャスト総勢 11名が終結し、この日を迎えた思いを熱く、そして懐かしく語った。
舞台挨拶司会は死に掛けた映画『解放区』を救った筒井龍平(つついりょうへい)プロデューサー、登壇者からは以下のようなコメントがありました。
琥珀(こはく)うた/出演
第一声で「5年経ってもう AV 女優じゃなくなりました、琥珀うたです」と会場を笑いに包んだ琥珀うた。
撮影中、西成の銭湯で出会った強烈な人々、一見では足を踏み入れることがない飛田新地での刺激的な体験を語り、改めてこの映画を撮影した太田信吾監督への感謝の気持ちを語った。
本山大(もとやまだい)/出演
太田信吾監督を大学時代から知る友人であり、今回『解放区』では心を病んでしまった引きこもりの中年ボクサーを演じた本山大。
撮影中、筋書きはあるものの本山を本気で怒らせる言動を取る太田に「演技ではなく、本気でムカついていたシーンがたくさんある」と撮影時のエビソードを語った。
岸建太朗(きしけんたろう)/撮影監督・出演
撮影の拠点となった「西成カフェ・アース」の2階、15畳ほどのスペースに撮影クルー、出演者が共同生 活を送っていたことを語り「この街に暮らす労働者よりも過酷な環境なんじゃないか?と思うことがありました」と当時を振り返った。
鈴木宏侑(すずきこうすけ)/撮影助手・出演
撮影助手として現場に入った鈴木だが、気がつけば坊主頭でスカジャンを着用し“ヤクの売人”として太田が演じる須山を追いかけていた。鈴木が自己紹介を始めるとすかさず太田監督が「今日も(クスリ)持ってます?」と声をかけ、会場が笑いに包まれた。
島田雄史(しまだまさし)/助監督
岸から「太田さんも島田さんも、撮りたいものがあったら何でもする」と言われると、軽トラックで何度も、何度も大阪~東京間を行き来したと語り「経費削減のため下道で(笑)」と照れ笑いを浮かべた。
祁答院雄貴(けどういんゆうき)/出演
池田良(いけだりょう)/出演
お客さんがこの人なんのシーンに出てきた人だろう?と固唾を飲んで自己紹介を待っていたこの2人。
「祁答院雄貴です!東京シーンに出演しましたが、演出都合で全てカットになりました」と自己紹介するなり会 場は笑いに包まれた。太田は「作品演出の都合上、今回カットにさせて頂きましたが、彼はとても注目して いる役者さんです」と語る。また次に挨拶の順番が回ってきた池田良が「同じく、なんで僕もここに立って いるのかわからないんですけど」と話し出すと、すかさず太田が「声は出ているよ!」とフォローを入れ会場が笑に包まれた。
普通の感覚でいくと、初日舞台挨拶の場にカットした役者を出演オファーすることも、その役者がその場に登場することもないのだろうが、同じ作品を共に作り上げた仲間としてお互いがこの様な形でこの場に共存することが太田作品の不思議な結束力なのだと感じた。
櫻堂美夏子(さくらどうみかこ)/出演
池田と共に、須山がテレビ局にプレゼンに行く際出演していた櫻堂は「私はありがたいことに映っています」と笑いを誘い、改めて5年をかけてこの日を迎えることができたことに感謝しますと語った。
寺川大地(てらかわだいち)/撮影時の宿泊先、西成カフェ・アース店主
撮影拠点となった西成カフェ・アースの店主・寺川は、岸が先に話していた撮影中の共同生活の話を受け、開口一番「過酷な生活を提供したのは私です(笑)」と自己紹介する。
すると太田が「この映画を撮りたいと最初に相談したのは寺川さん。ここでの暮らしを提供してくれたり、ここで生活をするための“いろは”をすべて教えてくれたのは寺川さん。この作品における西成のプロデューサーは寺川さんです」と感謝の気持ちを語った。
太田信吾(おおたしんご)/監督・出演
前日、京都国際映画祭のため久しぶりに西成に宿泊し、改めて5年の歳月が西成の街をガラリと変えたことを感じた。高度経済成長期の労働力を支えたあいりん地区の象徴、あいりん総合センターの閉鎖をはじめ、撮影当時では信じられないが、海外からの旅行者も複数見かけ驚いた。
「変わってしまった西成を眺め、紆余曲折あってこの公開までの5年という歳月はこの映画の熟成期間だったと思えるようになった。なんとも貴重な映像を撮らせてもらっていたと改めて強く感じている。撮影中、そしてこの日を迎えるまでに協力してくれたすべての人に感謝します」と語った。
そして、舞台挨拶終盤。急遽筒井プロデューサーが設けた「質疑応答タイム」には当然のごとく映画のクラ イマックスの太田の投薬シーンに質問が集中した。
太田「ここまで全部リアルなものを撮っているんだから、ここもリアリティを追求するために本当にやったほうがいいかな?ってみんなに相談したら本山さんが怒って部屋を出て行っちゃったんですよ」
本山「あの時本当にやってたらここにはいないんだからね!」
会場「笑」
役柄の重さからは信じられないハートフルなキャスト勢の人柄と、チームの結束に心温まる終始和やかムードの初日舞台挨拶。最後に太田は「西成という街は人間のダメな所をすべて受け入れてくれる、受け入れた上でこれからどうするか?とみんなで考えて、それを支え合うセーフティーネットが完成した街」だと語った。上映後には拍手が巻き起こった映画『解放区』。
ただ一つモヤモヤが残ったとしたらこれだけだ。
「一体、何が問題だったのか」と。
平成を超え「コンプライアンス」「リテラシー」が声高に叫ばれる新時代・令和。5年の歳月を経て公開された映画『解放区』の何が問題だったのか…問われているのは、「映画」か、それとも「観る者」なのか…。ぜひ劇場で映画『解放区』を観て自身に問いかけてもらいたい。
今後もテアトル新宿では多彩なゲストを迎えた劇場イベントが開催!
☆10/22(火)劇場公開記念トークイベント第2弾!
20:35の回上映後
ゲスト(予定):阪本順治(映画監督)、太田信吾監督
料金:通常料金 ※TCG メンバーは 1,100 円!
チケット:劇場オンライン、劇場窓口にて絶賛発売中!
☆10/23(水)劇場公開記念トークイベント第3弾!
20:35の回上映後
ゲスト(予定):峯岸みなみ(AKB48) 、太田信吾監督
チケット:絶賛発売中!
料金:通常料金 ※サービスデーで皆様 1,200 円!
<公開決定劇場>
10/17(木)|京都・京都国際映画祭
10/18(金)~|東京・テアトル新宿
11/1(金)~|東京・UP LINK 吉祥寺
11/1(金)~|大阪・テアトル梅田
11/1(金)~|大分・別府ブルーバード劇場
11/1(金)~|長野・上田映劇
11/2(土)~|愛知・名古屋シネマテーク
11/2(土)~|京都・出町座
11/9(土)~|神奈川・横浜シネマ・ジャック&ベティ
11/15(金)~|大阪・シネマート心斎橋
11/16(土)~|東京・UPLINK 渋谷
11/16(土)~|大阪・第七藝術劇場
11/16(土)~|兵庫・元町映画館
11/16(土)~|沖縄・ゆいロードシアター
11/23(土)~|静岡・静岡シネ・ギャラリー
上映決定|広島・横川シネマ
以降全国順次公開!
映画『解放区』の最新情報は公式ホームページ、公式Twitterをチェック!