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ソフト・オン・デマンド創業者にしてマジックミラー号の生みの親 高橋がなり氏インタビュー『マジックミラー号』はいかにして国民的AVとなったのか?

AVが誕生して36年余。どちらかというと後ろ暗かったり、ヒソヒソと下世話なこととして話されることが多く、それまでアウトサイドにあったアダルトビデオという存在は、ソフト・オン・デマンドの誕生によって状況が変わった。そして、ひとつの企画の中で生まれた移動式スタジオ『マジックミラー号』は、今や、芸能人がテレビやラジオで取り上げたり、若者たちが「街で見かけた!」とSNSで話題にするほどの知名度となった。もはや国民的AVと言っても過言ではないほどのコンテンツにまで成長したマジックミラー号はいかにして誕生したのか。引退から10年以上が経ち、めったにメディアに登場することがなくなったソフト・オン・デマンド創業者であり、マジックミラー号の生みの親である高橋がなり氏に話を聞いた。

深夜。仕事終わりの自宅のリビング。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、レンタルショップで借りてきた数本のエロビデオの中から一番楽しみにしていた1本をビデオデッキに滑り込ませた。しばらくして、どこか東京の繁華街を背に、真っ黒に日焼けしてサングラスをかけた頭の悪そうな茶髪の兄ちゃんが、陽気にカメラに向かってまくし立てている映像が映った。茶髪ナンパ師は街行く女を物色し狙いを定めて「ねぇ、ねぇー、今何してるの? 暇?」と声をかけていく。

「えーやだ~、ナンパ?怖い~(笑)」そんな調子で立ち止まりもせず足早に去っていく女たちを諦めて次々声をかけていくと、ちょうど5人目くらいか、全身真っ青の肩パットが入ったスーツを着たワンレンの美女が茶髪ナンパ師の言葉に立ち止まった。最初こそ「やだ、信じらんなーい」と断っていた女も、ナンパ師の怒涛の口説き文句に折れて交渉成立。そそくさと、近くのホテルに消えていき、切り替わった次のカットではホテルで濃厚なキスをする2人の映像が映し出されていた…。

「コイツらはなんて演出能力がないんだよ!!」ビデオデッキのリモコンの停止ボタンを押しながら画面に向かってありったけの不満をぶちまけた。

高橋がなり、この時30歳半ば。

パンツを脱いで下半身は丸出しである。

ひとつの失敗から生まれたマジックミラー号 これはアンチ空中ファックだ

ーー1996年に、初代マジックミラー号が誕生して20年。改めて、マジックミラー号が生まれた経緯を教えてください。

デマンドの歴史のすべては『空中ファック』に集約されるんだけど、それに対してミラー号は「アンチ空中ファック」。どういうことかというと、僕らはテレビ業界からアダルト業界に入ってきて、バラエティ的な映像技術や手法に、エロをくっつけたものを作ろうと思った。これが当たると思ってた。でも、大外れした。

あの頃は作品を出せばだいたい1万本は超えるという世界で、『空中ファック』は5万本くらいを出荷したかな。全国のお店の入口にドーンと平積みしてね。それで実売がなんと1千本以下だった。あの頃、どんな作品を出したって5千本やそこらは売れたのに、1千も売れなかった…。店の人に聞いてみるとお客さんが「空中ファックありますかー!?」って入ってきて、パッケージをじっくり30分ぐらい見て置いて帰っちゃう人ばっかりだと。

ただ、マスコミ含めて一部の人にはものすごく評判が良くて、いまだに、SODであれが1番売れたんじゃないのかって言われてるくらいなんだけど。

 

ーーどうしてそんなことになってしまったのでしょうか。

これ、なんでだろうって考えると、「僕はあなた方の望むエロを撮る気はありません。僕はこんなことできるんですよ!どうですか!」って言う匂いがジャケットにプンプンしていたんだろうなと思う。女の子よりもクレーンの迫力を優先して写真を大きくして。

悪かった要因は色々あるんだけど「俺が」っていうのが出ちゃってお客さんが望むものを作ろうとしてなかったんだと思う。でも、お客さんが望むものがなんだかわからなかったので、ならば今まであったAVを僕が撮るとこうなりますよという部分だと思って、当時、デマンドに女優を連れてきてくくれるプロダクションはなかったから女優ビデオではなく企画ビデオをどう変えられるかと考えた。

『空中ファック』で自分がやりたいことをやって失敗したならば、やりたくないことをやろうと。色々考えて「痴漢」「盗撮」「ナンパ」はやりたくないなと思って、じゃあこれをやんなくちゃいけないなと。

そこから『女盗撮師だから出来た盗撮』とか『痴漢10人隊』『マジックミラー号』『公然わいせつ』みたいな作品がどんどん出てくるんだけど、あの一連の作品てのは全部空中ファックの反省から生まれて、僕がやりたくないものを、さもやりたいかのように熱心に作ってみようというところから来てる。

 

ーーどうしてそれらはやりたくないと思ったのですか?

端的にいうとメジャーな映像を作ってきたというプライドかな。こんな俺がアダルトの世界に入ってきてるのに、「アダルトなんて恥ずかしいことしたくない」っていう。でもそんなのは、ジブリ映画よりもAVを買うような人たちが許すはずがない。ならば、このAV好きたちが喜ぶ、徹底的に下世話で品のないお下劣なAV屋になりきってやろうかと思ったの。AVってのは人の醜い欲望を昇華させてあげるもので、これこそがAVの使命だと。

 

今までのナンパビデオは不満だらけ本当にナンパすれば演出も不要だ

ーーその中の一つが「ナンパ」だったと。

ナンパものってのはわりと僕も好きでレンタルして観てたんだけど、パンツ脱いでナンパAVを見ながら画面に向かって5分に1回怒ってたね。「そのカットは違うだろ!それはカットしちゃダメだよ!」あと、女の子に声をかけて、最初は立ち止まりもせずに断っていくわけだよ。そうすると5人目くらいにそれらしき女の子が、立ち止まるわけ。

そこから口説かれて「わかりました、やります」ってホテルについて行くんだけど。断る人間は立ち止まらないのに立ち止まった瞬間に、あ、これはヤラセだなってわかっちゃうの。なんて演出能力がないんだこいつらは! と。同じように歩きながら口説いていって口説かれたなら信用できるんだけどもあまりに技法が稚拙すぎるなと思ったから、じゃあそこを徹底的にやってやろうと思った。

だけど、待てよと。それよりも本当にナンパしちゃったほうがわざわざそんな演出しなくてもいいじゃないかと思ったんだよ。うまくユーザーを騙してあげるのはベター。ベストは本物のナンパだろうなと。

 

ーーナンパビデオにマジックミラー号を導入した理由とは

あの頃ナンパビデオはナンパに成功すると、ビルとビルの間の陰とか、ホテルに行ってSEXするとかばっかりで、これは本物の素人にはハードル高いだろうと。もっと気楽に撮影できないかと考えて、スタジオを路上に持っていけばいいと思いついた。

女の子が「どこでやるんですか」ってなったときにホテルにはついて行けませんと、それよりも「ここでやりましょう」って目の前にあれば安心だし、考える隙を与えない。綺麗な女の子がハードなSEXをしてるAVはたくさん出てるわけ。じゃあ、ナンパAVってなんなのっていうとそれは内面性なの。

そんなことをしそうもない女の子がエッチなことをしちゃうというギャップね。お金払うって言って簡単についてくるような子であれば、別にマジックミラー号なんて作る必要ない。ちょっと、興味があって出てもいいかなって思ってる、そんな子たちをあとひと押しするためにどうしたらいいかって時に、目の前にあるスタジオだったらハードルが下がるでしょ。

 

ーー初代ミラー号を作る際にこだわったことは?

金がなかったこともあるんだけど「いかにも壊れそうな車を作れ」ってことかな。箱はベニヤ板で作って、マジックミラーもプラスチックで。トントンて押すと歪むくらいの。

これは、女の子に対してなにかあったらここぶち破って逃げれるし、きゃー!って大声出せば周りにも聞こえますからと伝えて、変な密閉感を出さず、しかもマジックミラーっていう外と繋がってる感じと合わせて、自分は密閉されたところに監禁されてないんだっていう安心感を与えた。

顔を隠すために中にすりガラスを入れたのも、あとでモザイク入れますからなんて説明してもAV屋なんて誰も信じてくれないから最初から隠れてますよっていうために。

まあ、撮影中はカメラが回り込んだりするから映っちゃうんだけどさ。女の子がその気になってくれるために、「怖い」と思うようなことは徹底的に排除してハードルをどんどん下げてあげようと。

 

ーーほかにもスタッフに指示したことがあれば、教えてください。

ナンパ師には必ず「敬語を使え」と指示した。「いいじゃん、やろうよ~」みたいな声のかけ方じゃ警戒されるし、ヤンキーみたいな子しか来ないんだよ。相手にあった言葉を使えと「左様でございますか、我々はこういう撮影を行っております。ぜひご安心ください」みたいに常識ある会話をしろって。そうしたら普通の子が来るから。

これは友釣りと一緒で、ヤンキーがチャラチャラナンパすると、ヤンキーのお姉ちゃんしかついてこないんだよね。それと、あの頃の1番の俺の正義は、モザイクを入れるから女性が特定されないってことだね。普通の子を口説いて、その子がAVに出たことによって日常生活が破壊されることがないように、顔にはモザイクを絶対に入れるってことは徹底したな。それがあったから徹底的に口説けたよね。

女の子を不安にさせないよう、わざと壊れやすくしたという初代マジックミラー号。外観も警戒心をなくそうと可愛らしく水玉にしたが、それがかえって目立ち、1年もしないうちに人だかりができるようになってしまったため、すぐに白く塗り替えられた。

ーー顔にモザイクが入ることによって、より本物素人のリアリティもでたのでしょうか。

それもあるけど、チンチンで物を考えている時の男は騙せない。仕込みか仕込みじゃないか脳は騙せても、チンチンは騙せないからどんなに演出してもにじみ出ちゃうんだよ。こういう作品を取ろうと思ったら、AV屋よりも僕らのほうが強いんじゃないかな。

 

マジックミラー号アイデアの元ネタはテリー伊藤さんの企画会議での一言だった!

ーーミラー号はもともとどこから生まれたアイデアだったのでしょうか。

昔、テリー伊藤さんが総合演出ををしていたテレビ東京の「いじわる大挑戦」という番組の企画会議で、「雅也、マジックミラーというガラスができたらしいぞ」と言われて。

あれ多分ね、伊藤さん風俗かなんかで見てきて知ったんじゃないかと思うんだけど(笑)。マジックミラーを扱ってるガラス屋を調べて、そこにタイアップで借りてきて、美術さんに1面がマジックミラーになっている箱を作ってもらって、路上にそれを置いて、街ゆく女の子たちに覗いてもらおうっていうロケをやったの。

渋谷だったんだけど、そんな大きいものを路上に置く許可は絶対に降りないから伊藤さんには「いざとなったら逃げてください。俺が捕まりますから」っていう、まさにゲリラ撮影。で、グーッと近づいて覗くと芸人が素っ裸でお尻を突き出してるわけ。見えた瞬間に「きゃー!」って逃げていく様子をカメラに撮ってたの、ただそれを数人やっただけのロケだったんだけど(笑)。

あの時の、内側から撮った映像が中は真っ暗なのに、外が明るいっていう不思議な絵がとても印象に残ってたんだよね。だから、マジックミラー号シリーズの企画の大元はテリー伊藤さんなんだよね。あれは、ただの箱を持っていっても同じように撮れたんだろうけど、あのマジックミラーを貼ってなければここまでのヒット作にはなってなかったと思う。

 

ーーシリーズ1作目は渋谷の繁華街のど真ん中を背景にしていて、今では考えられない映像です。やはり、場所にもこだわりはあったのでしょうか。

ロケ場所は、誰もが知っている人通りが多いところにこだわったな。

渋谷は109。新宿はアルタ前。上野はアブアブ前。池袋は西口公園前、というようにね。後ろの景色をメジャーなところにしろっていうのはすごくこだわった。

それがテレビ屋だった俺たちにしかできない部分で、エロはしっかりおさえます。さらに、プラスアルファを加えたことによって、見たこともない異常な絵が撮れた。単純にAV屋はそこの絵作りに労力をかけるってことはしなかったと思う。このミックス感が非常によかったよね。

ナンパ師M・金子の人が良さそうな丁寧なナンパと、顔が絶対出ないという安心感で次々と女の子がミラー号に乗ってくる。有名繁華街をバックに、お金と引き換えに下着やおっぱい、お尻を恥ずかしそうに見せる姿は当時も今も衝撃的。

ーーナンパは最初から順調にいったのですか?

最初はそんなに簡単に来てくれなくてナンパがすごく難しかったな。最初のロケに俺は行かなかったんだけど、1本目の監督のマメゾウ(現ディープス会長)に途中で電話をかけて様子を聞いたら「もう、バンバンできてます!」って言ってるからじゃあプレビュー楽しみしてるぞ!って言って電話を切った。

それで、いざプレビューしてみたら、これまでさんざんレンタルでナンパAVを見てきた俺の目は騙せない。全部、ヤラセ。仕込みのお姉ちゃんを入れてたんだよね。マメゾウにしてみたら誰も捕まえられなかったら怖いっていう思いがあって、ただで帰ってくるわけに行かないから仕込みを入れてたんだよね。それで、カンカンに怒って全部ボツにして。テメーもう一回行け!と。

次は愛車のスターレットに乗って後ろをずっと張り付いて見張ってたわけ。当時、俺怖かったらしくて、ナンパ師の金子(M金子・観念絵夢)が、俺がちょっと手を振り上げる仕草をしただけで、殴られると思ったのかうわってのけぞるの。だから俺がスターレットで見張ってるとバンバンナンパが成功した。それ見て、人間て追い込まれるとできるんだなと思ったよ(笑)

その後に、ナンパで活躍したのが菅原ちえって言う女子社員(後のソフト・オン・デマンド社長)。彼女にはお前がどういうナンパをするか、どれだけの子を捕まえられるかでお前の演出能力を図っていくからと言って。これができればお前に監督させてやると。できなければ一生ADか辞めた方がいいぞって追い込みをかけてね。菅原はナンパ師として1番活躍したね。

 

ーー高橋さん自身が印象に残っている作品や現場があれば教えてください。

ある程度手応えがでてきて、次は銀座に攻めようと考えた。銀座の女は簡単に脱がないだろうと。もちろんそんなにうまくはいかないんだけど、その中で、人と待ち合わせ中の普通のOLさんが乗ってきてくれて、ブラウスを脱いでブラジャーを見せてくれるところまでしてくれた子がいて、今でも俺の中ではあれが1番エロと思ってる。

なんでついてきたんですかって思うくらい、俺もあのときは外から見てて怖くてしょうがなかったね。下手なことして警察に訴えられたらどうしよう、早く帰ってくんねえかな!って(笑)。これはビビったし、エロいと思ったよ。

女の子の価値を高め精神の葛藤まで見せるマジックミラー号は非日常を演出する道具

ーー初期のマジックミラー号作品において一番こだわった点は?

1本目のタイトルを付けるときに、周りは「路上ナンパ」って言葉をつけたほうが良いだろうという意見だったんだけど、俺はこだわって『マジックミラー号がイク!』というタイトルにしたの。

この作品の肝はマジックミラー号なんだと、これがないとナンパできないし映像も成立しない。エッチな姿なんて想像もできない女の子がどこまでやってくれるか。「全裸までいくら」という最大でも脱がすまでが初期のマジックミラーのコンセプトで、キャッチコピーは「世のお父さん嘆いてください」と。

今の若い子はこんなことまでやっちゃうんですというのを表現したかったんだよね。女の子は非日常の中だと、少し高揚するの。あの特殊な環境があるからこそ脱いでくれるっていう。それがマジックミラー号だったんだよね。

 

ーーその後シチュエーションも含めていろんなジャンルに発展してきました。

これがバラエティをやっていた強みだと思う。AVはエロければいい、余分なものは排除していく。でも映像にこだわりたい、映像作品としての魅力は少しでも残したい。エロは絶対に減らさず基本は抑えた上で、映像(企画)の魅力をどう入れていくかを考え続けることが大事で、それを追求するきっかけになったのがマジックミラー号だったと思う。

AVは料理で言うと寿司屋。いい大トロ(女)を提供する。僕は寿司屋じゃなくて高度な料理人になりたかった。手をかけたい。最良の大トロをフードプロセッサーにかけて何の味だかわからなくするフレンチに近いかな。「素人」に「恥じらい」を付け加えて料理する。そうすると、「AV女優」という大トロにも勝てるんではないかと考えた。これはテレビでやってきたことが生きてるかな。

デマンドを10年離れて、マジックミラー号がデマンドとディープスでまだ続いているって聞いて、僕の精神はデマンドの方に残って、ディープスは分家として違う形で残っている。お客さんが好きな方を選べばいいと思う。女の子の価値を高めるための道具がマジックミラー号だと思う。マジックミラーという臨場感、見えていない精神の葛藤を見せたい。そこに欲情やエロが映るんじゃないかな。

 

ーーいまのミラー号作品に対して思うことはありますか?

俺の作り上げたてきた誰も見たことがない映像。よくぞこれを否定して進化させてくれたって感謝はしてる。あの当時の形があって、それを今そのままやっていても受けなかっただろうし、時代に合うように良い進化をさせたと思う。さらにこれからどう否定していってくれるのかってのを見たいんだよな。

俺には絶対に考えつかなかったことだなと思えれば嬉しいし。先人の作り上げたものを否定するしか今の若い製作者には価値が生まれない。年寄りを否定しないと。

例えば、俺はいい女が来たらどういう子なのかファッション含めてどうしても引きの絵が撮りたくて、4000万かけて全部電動の今の2号車を作った。本来だったら5号車くらいになってなきゃいけないんだよ、今使ってる人間は絶対不満があるはずだから。

 

ーー今、あえてマジックミラー号にかわるものを作るとしたら何を作りますか?

飛行船だな。バックの絵に富士山とかが映ると良いなあ。俺が農業やって金を使ってなかったら作れたんだけどなあ。だって、素人の女の子に飛行船乗りませんかって言ったら絶対乗るだろう?飛行船だったら別にマジックミラーにしなくても良いかもしれないなあ。

今ある、撮影場所の問題だって、空なんか上がったら富士山にモザイク入れろとは言われないだろ。マスコミも来るぞ? 大金かけてこれをやっても馬鹿だなで終わる人がほとんどだだと思う。

でもさ、100万人くらいは喜んでくれると思うよ。エンターテイメントなんだからどうやったらお客さんが喜んでくれるかを一番に考えてやったら、AVってものがもっと世の中に明るいニュースとして取り上げられると思ってるよ。

 

ーー最後に、マジックミラー号がここまで人気になった理由は何だと思われますか。

女優がキャスティングできない、俺達にはナンパもできない。そんなマイナスの状況で生まれたのがマジックミラー号。ビジネスのヒントはマイナスから生まれるって、これビジネス書で語れる話だよね。俺たちが普段からナンパができてAVが撮れてたら、多分あの箱はできてなかったよね。

俺、もし金がなかったらあれを使ってナンパ代行の営業をしようと思ってたの。勇気がなくてナンパできない金持ちに、うちのスタッフ貸すから隠れて見ていてくださいって。で女の子がうっとりしてきたら自分が出ていってハメちゃうっていう。幸い映像で稼いだからそんなことしなくても良かったけど。あの箱はそういうことができるというロマンでしょ。

マジックミラー号は自分の世界のように思える。マジックミラー号は単なる素人ナンパじゃない。なぜこれが独り立ちしていくのか。それは世界観そのものだと思う。方法論は素人ナンパっていうことでいろいろしていくんだけど、その世界観そのものがおもしろいっていう、それが今、日本中の男の人に受けている理由だと思うよ。

 

高橋がなり(たかはし がなり)

1958年生まれ。横浜市出身。佐川急便(ドライバー)を経て、IVSテレビ(テリー伊藤の弟子として「元気が出るテレビ」などディレクター・タレントショップ事業部設立)その後、独立するがゴルフショップなど2社起業&倒産させる。もう一度テリー伊藤に拾われ中華料理店店長・ビデオ制作プロデューサーを経験し、三度目の独立でAVメーカー「ソフト・オンデマンド」を起業。その後、勇退して農業改革を目指して「国立ファーム」野菜レストラン「農家の台所」経営中。

初出:ソフト・オン・デマンドDVD 2017年 07月号増刊『マジックミラー号誕生20周年 永久保存版!』の内容を一部加筆修正しています。

 

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